Laboratory of Landscape

村上修一研究室

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気候変動適応の研究

国内外の都市を対象に,沿岸域,氾濫原,公園緑地系統の再編のあり方を探っています。
米国ボストン市では,気候変動適応の包括的な取り組み「Climate Ready Boston」によって,今後,沿岸域や公園緑地系統の再編が進むと予想されます。現在の状況やプロジェクトの進捗状況を把握するために,2019年8月から9月にかけて対象地区を実際に歩きました。

Climate Ready Boston のホームページ
ボストン市の土地の約半分が,海の埋め立てによって造られました。海面上昇にともなう浸水に脆弱な低地の多い沿岸域では,水害の抑制と親水性の向上の両立を目的とする空間の再編が計画され,進められています。2019年9月の時点で,下の地図に示す沿岸の各地区で具体的な計画が策定されています。このうち,8月の時点で計画が公開されていたCharlestown,East Boston,North End,Downtown,South Boston,Moakley Parkを踏査しました。

Charlestown


Main Street(画面を横断する道路)の最低部は,海岸(画面奥)から内陸(画面手前)への浸水の通り道となるため,新しい道路(写真中央の線路敷)を整備する際に,かさ上げすることが検討されています。


Ryan Playground(画面右側・手前)とSchrafft's Center(画面左側・奥)の海岸には,かさ上げされた公園や広場,水上デッキ,再生干潟等が整備される予定です。


Spaulding Rehab(リハビリテーション病院)の海岸には,かさ上げされた公園が既に整備されていました。

Climate Ready Charlestown のホームページ
East Boston

Marginal Streetの海側で進む集合住宅の建設 内陸に向かう浸水の通り道になると予測されている場所です。住棟の1階は地面より1.5m程度高いか,ピロティや倉庫となっていましたが,住棟間の街路は低いままでした。海岸にかさ上げされた公園や歩道が整備されるそうですが。

線路跡地を緑道にしたEast Boston Greenwayですが,周囲の街区より低く,内陸への浸水の通り道になると予測されています。街路との立体交差部の隧道に可倒式の防潮扉が整備される予定です。

建設ラッシュの海岸部にこのような空地を残し,かさ上げされた海浜公園を整備するとのことです。船のドック跡地です。

Condor Street Urban Wild 工場の跡地に,盛土の地形に沿った散策路と展望台,草原,塩性湿地が整備されました。

ランドスケープ・アーキテクトによる Condor Street Urban Wild の解説

Climate Ready East Boston のホームページ
North End / Downtown


かさ上げ改修工事中のPuopolo Langone Park

水族館横の既存デッキ ダウンタウンの湾岸に沿って防潮堤を兼ねたハーバーウォークを長期的に整備することが検討されています。ここでは,水族館の改築にあわせて,潮位に応じて上下する水中観察用のデッキも整備されるとのことです。

The Blue Way, STOSS Landscape Urbanism


水族館からRose Fitzgerald Greenwayを経てCustom Houseへ抜ける通りは,浸水の通り道となるため,Greenwayと側道のかさ上げが検討されています。

Climate Ready Downtown and North End のホームページ
South Boston

Fort Point Channelの沿岸では,一部,かさ上げされた公園とハーバーウォークが整備されていました。高さ3mの盛土の奥にPlay Ground(Martin's Park)があります。

Fort Point Channelの沿岸には,水際まで建物によって占められる区間があります。このように,建物の1階がハーバーウォークとして公開されています。潮位上昇にともない浸水頻度が高まると予想されます。

Fort Point Channelの東岸(画面右)では,今後,大規模な開発が進みます。それに伴い,かさ上げされた公園やハーバーウォークが整備される予定です。

Pier 4 Waterfront Park and Plaza(Reed Hilderbrand LLC Landscape Architecture,写真提供:Gary Hilderbrand)
South Bostonの沿岸部では,集合住宅やオフィスビルの建設が進んでいます。Pier Fourの集合住宅では,2070年の想定高潮位に対応して旧埠頭をかさ上げ(上部の石積の色が違います)する一方,ハーバーウォークを水上に張り出すことで,高潮への対応と親水性の向上を両立させました。

Pier 4 Waterfront Park and Plaza, Reed + Hilderbrand LLC Landscape Architecture

Reserved Channelの沿岸では,Raymond L. Flynn Marine Parkという大規模開発が進行中です。運河の最奥部(写真)には,高潮の緩衝帯となる再生干潟が整備される計画です。

Pleasure Bay を丸く囲い込み,Castle Islandをつなぐ,海の中の散策路  Bostonの公園緑地系統の一部としてOlmstedによって描かれた計画が元になっています。South Bostonの近隣住区への浸水を抑制するために,Pleasure Bayごと,かさ上げされた堤防で囲い込むか,あるいは,そのままにして陸側のMarine Park(写真奥)をかさ上げするか,の両案が検討されています。

ランドスケープ・アーキテクトによる Pleasure Bay and Castle Island の解説

Climate Ready South Boston のホームページ
Moakley Park

この公園は,海に面した平坦な低地で,雨が降ると水浸しになり運動施設が使えなくなるといいます。さらに,2070年頃には,この公園から浸入する高潮が,South Bostonの近隣住区に水害をもたらすと予想されています。地形の操作,動線の再編,調整池や諸施設の整備等をとおして,沿岸部のレジリエンスを高めるとともに,近隣からのアクセシビリティを向上させる,公園のリニューアルデザインが進められています。

周囲の街区との間に幹線道路があり,公園へのアクセシビリティが高いとは言えません。実際,この公園はあまり利用されていないそうです。


現況ですが,開放感あふれる魅力的な公園です。牧場のような野球場の向こうに,Dorchester Heightsの木々,家並,尖塔を望むことができます。


フユボダイジュ(Little-leaf Linden)の大木が木陰をつくるとともに,サッカーフィールドの空間を仕切ります。


敷地周囲の南側が3mほど高くなっており,その高低差を利用して造られたスタジアムがあります。Dorchester Heightsや,Downtownのビル群が望めます。


公園の東側には,幹線道路をはさんでCarson Beachの砂浜とOld Harvorの水面が広がっています。正面はBeach Houseです。



Moakley Park Vision Plan のホームページ

STOSS Landscape Urbanism のホームページ
Emerald Necklace

ボストン市には,公園緑地系統(Park System)の先駆けとなった,Emerald Necklaceがあります。Climate Ready Bostonには,海面上昇に伴う浸水被害の抑制に加えて,雨水洪水や異常高温の対策も含まれていますが,雨水を集め木陰を提供するGreen Infrastructureとして,このEmerald Necklaceを見ることもできます。


Boston Common

現在,全面的な改修のための基本計画が検討されています。
Friends of the Public Garden のホームページ








Public Garden




Commonwealth Avenue








Charlesgate

Commonwealth Avenue と Back Bay Fen の接続部にあたるところ。現在,近隣の公共空間として活用する計画が検討されています。
Charlesgate Alliance のホームページ




Back Bay Fen

Muddy River 再生プロジェクトが進行中です。Jamaica Pond から Charlesgate までの区間で,洪水の軽減,水質の改善,環境の保全を目的とする対策が行われています。Climate Ready Boston の取り組みの一つとしても位置づけられています。
Muddy River Restoration Project のホームページ






Riverway






Olmsted Park








Jamaica Pond






Arborway




Arnold Arboretum








Franklin Park

動物園やゴルフコースを含む,市内で最大の公園です。これから,リニューアルのための基本計画が策定される予定です。担当するのは,Reed + Hilderbrand LLC Landscape Architecture です。

ボストン市のホームページ







Emerald Necklace Conservancyのホームページ
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