Laboratory of Landscape

Shuichi Murakami 村上修一研究室

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ランドスケープとは what is landscape ?

ランドスケープ landscape
 我々の対象とするランドスケープとは,壁にかけられた額縁の中の風景画なのか?

 しかし,都会の雑踏の中や森林の中では,風景と向き合うというより,空間のまっただ中にいるという感覚の方が強い。視点を対峙する位置におく絵画的(二次元的)認識だけではなく,視点を包む三次元空間としてランドスケープを認識することもできる。

 ランドスケープは風景画のごとく静止しているのか?

 我々の存在する世界には,時間という次元がある。 時間とともに変化する諸々の事象(大気の動き,水の循環,生物の営み,農作物の栽培,土地造成,住宅建設,等)もまたランドスケープを成す要素である。諸々の事象は空間要素の様相を左右する。 山は,地殻活動,侵食作用,植林といった事象の結果そのように見えているのである。 通りの景観は,土地の気象や繰り広げられてきた営みといった事象を映しだしている。

 ランドスケープは聞くことも触ることもできない風景画なのか?

 諸々の事象や空間の様相は,視覚に限らずあらゆる直接感覚により知覚される。大気の動きという事象は,風の音として聴覚により,皮膚にあたる風の感触により知覚される。外部に対する感覚だけでなく,想像上の風景や心象風景のような,我々の内部において意識化されるランドスケープもある。さらに,直接の感覚や意識がおよぶ対象だけではない。 技術の進歩によって,宇宙規模や素粒子規模の空間にまで間接的に我々の知覚がおよぶようになった。また,情報技術により仮想空間が出現した。今日では,これらの空間もランドスケープとして認識することができる。
ランドスケープ・アーキテクチャー landscape architecture
 ランドスケープの意味として,空間芸術という専門領域を挙げる辞書がある。自然風景を描写,再現する芸術であったり,住宅や公園のような陸景を整型する芸術であったり,定義は一致しない。

 今日のランドスケープ・アーキテクチャーLandscape Architectureという専門領域は,単に芸術として一括することができないほど広い。ASLA(米ランドスケープ・アーキテクト協会)によれば,少なくとも,陸域の分析,計画,デザイン,維持管理,保全,再生に関する芸術と科学以上のものとされる。つまり,ランドスケープに対する価値観にもとづき,何らかの空間操作をおこなう専門領域である。この場合の空間操作とは,分析,計画,デザイン,維持管理,保全,再生,それに何もしないことをも含む,広義の意味で用いている。
空間芸術としてのランドスケープ
 美的価値観の現実化が芸術であるとすれば,美的価値観にもとづいて,ランドスケープに対し空間操作をおこなうことも芸術である。絵画,彫刻,演劇,建築などの空間芸術との絶対的な違いはない。歴史的経緯から既成事実化した領域区分といえるのかもしれない。

 ただし,製作過程や完成後の作品が,他からの影響を受けやすいという相対的な相違がある。屋外の空間を対象とする場合には,諸々の自然現象の影響を受けやすい。また,公的という意味で作家以外の意識の介入を受けやすい。これはネガティブなことではない。変化しやすいというダイナミズム,あらかじめプログラムしにくい偶発性を特徴とする芸術といえる。
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